東 和子さんを偲んで 新谷 亜紀
私たち関西地区の大先輩、東和子さんが急逝されました。
訃報に接した時は耳を疑いました。あまりにも突然で信じられませんでした。
京都から、娘さんのおられる鹿児島の病院に転院され、ゆっくり加療され快方に向かっておられるとばかり思っていました。7月にいただいたメールも、お元気そうな内容だったので安心しきっていました。
でも、その後ほどなくお出ししたメールに返信がなかったので、そろそろお手紙でも書こうと、昨年ご一緒した吟行の写真をパソコンのデスクトップに貼り付けていました。そんな矢先の訃報でした。悲しくて、しばらく言葉も出ないほどのショックでした。
個人的なお話になりますが、私はここ数年親の介護に縛られ、一番俳句の修行になると言われる吟行に参加できませんでした。
そこで、和子さんの誠実でお優しいお人柄に甘え、私の極めて限られた時間にご一緒に吟行していただけないかとお願いしてみました。和子さんは快く承諾してくださり、即実行となりました。
でも、母をデイサービスに預けている間の短時間でしたから、少し遠出をすると、時には小走りで引き返したり、大急ぎで昼ご飯をかき込んだりしなければならず、毎回バタバタしました。この「大急ぎ吟行」は1年あまり続き、私にとっては俳句修行以上に、何より心が開放される楽しい時間となりました。
「大急ぎ」とはいえ、和子さんは要所要所でしっかり立ち止まり、句歴の浅い私に、きちんと季語等を教えてくださいました。
そして、いつも私より先に駆けてゆかれ、発見し、凝視し、聴き、触れ、感動される和子さんでした。おかげで私は、初めて経験する感動の瞬間を、何度も味わうことができました。
今でもはっきり和子さんの声が聞こえます。
「亜紀さん、ほら見てごらん!」
故・東和子さん(昨年12月2日宇治上神社にて)
この後、和子さんは綿虫を見つけられ、二人はしばらく少女のようにはしゃぎ、薄日に透けてゆく綿虫を見つめていました。
東 和子さん、本当に、本当にありがとうございました。
心からご冥福をお祈りいたします。合掌。